天空(そら)に咲く花~あのひとに届くまで~
第12章 真実
「やはり、ここにいたのだな」
後ろで聞き憶えのある深い声が聞こえる。もう、すっかり耳に馴染んだ大好きな男の声だ。
だが、自分はこの男の一体、何を知っていたというのだろう。夫婦として共に過ごすようになっても、八重は実のところ、嘉亨のことを何一つとして理解していなかった。否、というよりは、理解しようとしなかったと言った方が良いだろう。
八重は、ゆるゆると振り向いた。
並外れて上背のある嘉亨と向かい合う時、八重はいつもこんな風に見上げるようになってしまう。でも、八重は、その姿勢が好きだった。何故なら、好きなひとの顔をずっと見ていられるから。男にしておくのは勿体ないと女の八重が思ってしまうほど、きれいな顔をずっと見ていたいから。
そう、嘉亨と漸く晴れて結ばれた時、八重は思ったものだった。これからは、ずっと、この場所―嘉亨のすぐ側が自分の居場所なのだと。
だが、それは所詮、幻にすぎないのだろうか。自分では、この男の孤独を埋めることはできないのだろうか。
八重が想いに耽っていると、嘉亨がその想いを見透かしたかのように口を開いた。
「八重、そなたは何か勘違いをしているようだ」
嘉亨は、ふと頭上を振り仰ぐ。
まるで絶望という名の最果てに続いているかのような暗い、暗い空がひろがっている。
「昔語りに付き合うてくれるか? そなたは、あまり聞きとうはない話やもしれぬが」
嘉亨は低い声で言うと、視線を戻し、正面から八重を見た。
後ろで聞き憶えのある深い声が聞こえる。もう、すっかり耳に馴染んだ大好きな男の声だ。
だが、自分はこの男の一体、何を知っていたというのだろう。夫婦として共に過ごすようになっても、八重は実のところ、嘉亨のことを何一つとして理解していなかった。否、というよりは、理解しようとしなかったと言った方が良いだろう。
八重は、ゆるゆると振り向いた。
並外れて上背のある嘉亨と向かい合う時、八重はいつもこんな風に見上げるようになってしまう。でも、八重は、その姿勢が好きだった。何故なら、好きなひとの顔をずっと見ていられるから。男にしておくのは勿体ないと女の八重が思ってしまうほど、きれいな顔をずっと見ていたいから。
そう、嘉亨と漸く晴れて結ばれた時、八重は思ったものだった。これからは、ずっと、この場所―嘉亨のすぐ側が自分の居場所なのだと。
だが、それは所詮、幻にすぎないのだろうか。自分では、この男の孤独を埋めることはできないのだろうか。
八重が想いに耽っていると、嘉亨がその想いを見透かしたかのように口を開いた。
「八重、そなたは何か勘違いをしているようだ」
嘉亨は、ふと頭上を振り仰ぐ。
まるで絶望という名の最果てに続いているかのような暗い、暗い空がひろがっている。
「昔語りに付き合うてくれるか? そなたは、あまり聞きとうはない話やもしれぬが」
嘉亨は低い声で言うと、視線を戻し、正面から八重を見た。