天空(そら)に咲く花~あのひとに届くまで~
第2章 蓮華邂逅(れんかかいこう)
しかし、その真実をこの若君に告げたところで、どうにもなるものではない。八重は笑顔をこしらえると、頷いた。
「はい、伯父夫婦には子どもがいなかったものですから、私を実の娘のように可愛がってくれました」
弐兵衛はひとたびは八重を伊予屋の跡継として引き取っておきながら、弐助という養子を迎えると、さっさと追い出しにかかった。
だが、八重も今はそれで良かったのだと思っている。弐兵衛がこの木檜藩の上屋敷に上がる話を整えてくれたからこそ、八重はこうして清冶郞に逢うことができたのだ。この淋しい若君の心を少しでも明るくすることがこれからの務めだと、八重は堅く思い定めている。八重は自分のなすべきことを見つけ、その務めにやり甲斐を見い出していた。
なにより、務め云々の前に、清冶郞の愛らしさは八重の心を癒やしてくれる。清冶郞との出逢いは、この招き猫こそがもたらしてくれたものだと思わずにはいられない。
伯父はお世辞にも八重を大切にしてくれたとは言い難かったけれど、ここは何も言わない方が良い。八重の心中を知ることもなく、清冶郞は屈託ない笑みを浮かべた。
「やはり、良い。これは八重にとっては大切なものだ。八重が持っておった方が、そなたの伯父も歓ぶであろう」
清冶郞は利発なだけでなく、心優しい。子どもなりに精一杯考えて、こう言っているのだ。
「はい、伯父夫婦には子どもがいなかったものですから、私を実の娘のように可愛がってくれました」
弐兵衛はひとたびは八重を伊予屋の跡継として引き取っておきながら、弐助という養子を迎えると、さっさと追い出しにかかった。
だが、八重も今はそれで良かったのだと思っている。弐兵衛がこの木檜藩の上屋敷に上がる話を整えてくれたからこそ、八重はこうして清冶郞に逢うことができたのだ。この淋しい若君の心を少しでも明るくすることがこれからの務めだと、八重は堅く思い定めている。八重は自分のなすべきことを見つけ、その務めにやり甲斐を見い出していた。
なにより、務め云々の前に、清冶郞の愛らしさは八重の心を癒やしてくれる。清冶郞との出逢いは、この招き猫こそがもたらしてくれたものだと思わずにはいられない。
伯父はお世辞にも八重を大切にしてくれたとは言い難かったけれど、ここは何も言わない方が良い。八重の心中を知ることもなく、清冶郞は屈託ない笑みを浮かべた。
「やはり、良い。これは八重にとっては大切なものだ。八重が持っておった方が、そなたの伯父も歓ぶであろう」
清冶郞は利発なだけでなく、心優しい。子どもなりに精一杯考えて、こう言っているのだ。