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天空(そら)に咲く花~あのひとに届くまで~

第2章 蓮華邂逅(れんかかいこう)

「それよりも、ちょっと見せてはくれぬか」
 乞われるままに、八重は根付けを清冶郞に渡す。清冶郞が小さな招き猫を手に取り、物珍しそうに眺めている。
「面白い顔をしているなあ。眠たそうな表情がとぼけたようで、何だかこっちまで眠くなってきそうだ。八重、この首輪にはまった石は何の石であろう?」
 清冶郞もまた、猫の首輪に興味を引かれたようだ。障子から差し込む陽光を受けて、深い紅の石がキラリと光った。
「若君さまは石榴をご存じにございますか?」
「ああ、我が屋敷の庭にもあるぞ。もう少し経てば、花が咲くだろう。それが、どうかしたのか?」
「私も実は、この石が何というものなのかは存じませぬが、この深い色は何やら石榴の実に似ているような気がしてならないのでございます」
 八重が思ったままを述べると、清冶郞は素直に頷いた。
「そうだな、確かに言われてみれば、秋に見かける石榴の実に似ているような気がする」

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