天空(そら)に咲く花~あのひとに届くまで~
第2章 蓮華邂逅(れんかかいこう)
石榴は安産・子どもの守護神である鬼子母神とも縁が深く、初夏に小さな朱色の花をつけ、秋頃になると、実を結ぶ。その実自体も紅だが、実を割ると更に小粒の紅瑪瑙のような艶やかな粒が現れる。その粒の色に、この石はそっくりなのだ。
「珍しい石だ。何より、きれいだな。ずっと眺めていると、引き込まれるようだ」
清冶郞は子どもらしく興味深げな様子で首輪の石を飽きることなく眺めていた。
ひとしきり眺めた後、清冶郞は八重に根付けを返してきた。
「私は八重の話を聞いただけで、十分元気になった。だから、これは、そなたが持っているが良い」
「本当によろしいのでございますか?」
八重が言うと、清冶郞は大きく頷いた。
「私は木檜藩の世継だ。たとえ小藩とはいえども、一国をやがて統べる身となるからには、強くあらねばならぬ。このように泣き言を洩らしてばかりでは駄目だな」
八重はそれ以上何も言えなかった。まだたった七歳でありながら、木檜藩の世継であることを誰より自覚し、強くなろうとしている清冶郞。その健気さがいじらしくもあり、哀れでもあった。
―清冶郞さまのために、私は何ができるだろう?
再び手毬で遊び始めた清冶郞を眺めながら、八重はぼんやりとそんなことを考えていた。
「珍しい石だ。何より、きれいだな。ずっと眺めていると、引き込まれるようだ」
清冶郞は子どもらしく興味深げな様子で首輪の石を飽きることなく眺めていた。
ひとしきり眺めた後、清冶郞は八重に根付けを返してきた。
「私は八重の話を聞いただけで、十分元気になった。だから、これは、そなたが持っているが良い」
「本当によろしいのでございますか?」
八重が言うと、清冶郞は大きく頷いた。
「私は木檜藩の世継だ。たとえ小藩とはいえども、一国をやがて統べる身となるからには、強くあらねばならぬ。このように泣き言を洩らしてばかりでは駄目だな」
八重はそれ以上何も言えなかった。まだたった七歳でありながら、木檜藩の世継であることを誰より自覚し、強くなろうとしている清冶郞。その健気さがいじらしくもあり、哀れでもあった。
―清冶郞さまのために、私は何ができるだろう?
再び手毬で遊び始めた清冶郞を眺めながら、八重はぼんやりとそんなことを考えていた。