天空(そら)に咲く花~あのひとに届くまで~
第2章 蓮華邂逅(れんかかいこう)
八重もまた笑うと、清冶郞が真顔で言った。
「そんなことはないぞ、八重は―」
ふいに、清冶郞が照れたように怒鳴った。
そこで清冶郞は口ごもり、少し紅くなった。
「見た目もきれいだけれど、心もきれいだし、この蓮の花のようだ」
「ありがとうございまする。そのようにお賞めて頂いて嬉しうございますが、そう仰せになったのは、若君さまが初めてにございますよ」
八重が笑いながら言うと、清冶郞はますます紅くなった。
「それは皆に見る眼がないせいだ。私が大人の男ならば、間違いなく八重を妻に迎える」
清冶郞は早口で言うと、気まずげに視線を逸らした。
「八重のいちばん好きな花は何なのだ?」
「撫子にございます」
しばらく考えた末、八重は応えた。
「撫子、か。秋の花だな。季節が終わって、花が散る度、私は思うのだ。次にこの花が咲くまで、私は生きていられるかどうか。今年は八重と共に蓮の花を見ることができたが、来年の今頃はどうなっているか判らぬ」
清冶郞の声が小さくなった。
眼に涙が盛り上がっている。
「私は女々しい男だ。こんな情けなき有り様ばかり見せていては、大人になる前に、八重に嫌われてしまう」
八重はしゃがみ込むと、清冶郞と同じ眼線の高さになった。
「若君さま、子どもは子どもらしう、素直にお甘えになられれば、よろしいのでございますよ。泣きたいときには泣いて、はしゃぎたいときには思いきりはしゃげば良いのです」
と、清冶郞が泣き笑いのような表情になった。
「八重にそのように子ども扱いされるのは、私は厭だ」
「そんなことはないぞ、八重は―」
ふいに、清冶郞が照れたように怒鳴った。
そこで清冶郞は口ごもり、少し紅くなった。
「見た目もきれいだけれど、心もきれいだし、この蓮の花のようだ」
「ありがとうございまする。そのようにお賞めて頂いて嬉しうございますが、そう仰せになったのは、若君さまが初めてにございますよ」
八重が笑いながら言うと、清冶郞はますます紅くなった。
「それは皆に見る眼がないせいだ。私が大人の男ならば、間違いなく八重を妻に迎える」
清冶郞は早口で言うと、気まずげに視線を逸らした。
「八重のいちばん好きな花は何なのだ?」
「撫子にございます」
しばらく考えた末、八重は応えた。
「撫子、か。秋の花だな。季節が終わって、花が散る度、私は思うのだ。次にこの花が咲くまで、私は生きていられるかどうか。今年は八重と共に蓮の花を見ることができたが、来年の今頃はどうなっているか判らぬ」
清冶郞の声が小さくなった。
眼に涙が盛り上がっている。
「私は女々しい男だ。こんな情けなき有り様ばかり見せていては、大人になる前に、八重に嫌われてしまう」
八重はしゃがみ込むと、清冶郞と同じ眼線の高さになった。
「若君さま、子どもは子どもらしう、素直にお甘えになられれば、よろしいのでございますよ。泣きたいときには泣いて、はしゃぎたいときには思いきりはしゃげば良いのです」
と、清冶郞が泣き笑いのような表情になった。
「八重にそのように子ども扱いされるのは、私は厭だ」