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天空(そら)に咲く花~あのひとに届くまで~

第3章 雨の日の出来事

 雨に濡れた紫陽花がいっそう色を深めている。蒼色の紫陽花は、まるで晴れた空の色をそのまま映し出したように染め上がっていた。
 八重の想いもまた、あの紫陽花のように色をうつろわせ、深く染め上がってゆくのだろうか。けして好きになってはいけない男を好きになってしまった自分の危うさを厭というほど感じながら、八重は鮮やかな色に染まった色とりどりの紫陽花を眺めた。
 海色の紫陽花が滲んだのは、雨のせいではなく、涙のせいに違いない。

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