天空(そら)に咲く花~あのひとに届くまで~
第4章 第二話〝茜空〟・友達
「ふふっ、ご馳走さま。それも、お惚けっていうのかしらね」
想像したとおり、お智は亭主になる眞太郎の母とも上手くいっているようである。
八重が微笑むと、ふと、お智が真顔になった。
「私のことなんかどうでも良いのよ。お弥栄ちゃん、それよりも何か悩みでもあるんじゃない?」
唐突に話をふられ、八重は言葉に窮した。
「間違ってたら、ごめんなさい。でも、ここに来たときのお弥栄ちゃん、何だか随分と思いつめてたような顔をしてたから。―何だか苦しい恋をしているように見えたから」
その言葉に、八重の表情が強ばった。
いや、八重以上に、傍らの清冶郞が弾かれたように顔を上げ、八重を見た。
八重は辛うじて体勢を建て直し、笑った。
「やあね、お智ちゃん。この私にそんなご大層な悩みがあるわけないでしょう。第一、毎日、お屋敷勤めでそんな暇なんてどこにもないのよ」
清冶郞のいるこの場で、恋が云々という話はしたくなかった。恋の話になれば、どうしても嘉亨のことを嫌が上にも思い出し、その想いが態度に出てしまうからだ。聡い清冶郞には、その微妙な変化をすぐに悟られてしまうだろう。
「そうなの? 私も眞太郞さんと知り合ったばかりの頃は、自分の好きっていう気持ちをなかなか打ち明けられなくて、もやもやとしてたから。今のお弥栄ちゃんは何となく、その頃の私のような感じがしたから、訊いてみたんだけど」
流石は長年の親友である。八重の悶々とした心の内を一瞬で見抜いてしまったのだから。しかし、清冶郞の前でだけは、本心を吐露するわけにはゆかない。恋愛に関しては先輩であるお智に今の自分の嘉亨への想いを打ち明け、これからのことを相談したいのは山々だったのだけれど。
想像したとおり、お智は亭主になる眞太郎の母とも上手くいっているようである。
八重が微笑むと、ふと、お智が真顔になった。
「私のことなんかどうでも良いのよ。お弥栄ちゃん、それよりも何か悩みでもあるんじゃない?」
唐突に話をふられ、八重は言葉に窮した。
「間違ってたら、ごめんなさい。でも、ここに来たときのお弥栄ちゃん、何だか随分と思いつめてたような顔をしてたから。―何だか苦しい恋をしているように見えたから」
その言葉に、八重の表情が強ばった。
いや、八重以上に、傍らの清冶郞が弾かれたように顔を上げ、八重を見た。
八重は辛うじて体勢を建て直し、笑った。
「やあね、お智ちゃん。この私にそんなご大層な悩みがあるわけないでしょう。第一、毎日、お屋敷勤めでそんな暇なんてどこにもないのよ」
清冶郞のいるこの場で、恋が云々という話はしたくなかった。恋の話になれば、どうしても嘉亨のことを嫌が上にも思い出し、その想いが態度に出てしまうからだ。聡い清冶郞には、その微妙な変化をすぐに悟られてしまうだろう。
「そうなの? 私も眞太郞さんと知り合ったばかりの頃は、自分の好きっていう気持ちをなかなか打ち明けられなくて、もやもやとしてたから。今のお弥栄ちゃんは何となく、その頃の私のような感じがしたから、訊いてみたんだけど」
流石は長年の親友である。八重の悶々とした心の内を一瞬で見抜いてしまったのだから。しかし、清冶郞の前でだけは、本心を吐露するわけにはゆかない。恋愛に関しては先輩であるお智に今の自分の嘉亨への想いを打ち明け、これからのことを相談したいのは山々だったのだけれど。