天空(そら)に咲く花~あのひとに届くまで~
第4章 第二話〝茜空〟・友達
上屋敷に上がるために、裁縫の師匠に暇乞いをした帰り道、八重は道端で招き猫の根付けを拾った。丁度、その時、お智も一緒だったのだ。招き猫と聞いただけで、八重はそれがあのときの根付けを指すのだと判った。
「あれは、今は、こちらの清冶郞さまの許にあるの」
八重は、清冶郞の病のことには触れずに、清冶郞にお守り代わりに上げたのだと話した。
「そうなのだ、あの招き猫はたいそうご利益がある。私も八重からその話を聞いたときには半信半疑であったが、嘘ではなかった。私が死にかかっていた時、八重がその招き猫ら願をかけたら、たちどころに病が癒えた。そればかりか、最近は身体の調子もいつになく良い。寿命が三倍に伸びる効験あらたかなお守りだという話は、やはり真だったようだな」
清冶郞が勢い込んで言う。
刹那、お智が何とも言えぬ顔で八重を見た。
その表情は愕くというよりは、おかしくてならぬのを堪えているようである。
「そうなのよ、ね、お智ちゃん、あの根付けは何でも天竺の有名なお坊さまの持ち物だったというだけあり、たいそうご利益のある。ありがたい品なのです」
八重がもっともらしい顔で言うと、お智は笑いを懸命に抑えている顔で相槌を打つ。
「そうそう。滅多とないほどのありがたいお守りなのよねえ」
「八重、だが、私がそなたより聞いたのは確か天竺ではなく、唐のなにがしとかいう僧侶の持ち物だったということだが」
清冶郞は頭が良く、物憶えの良さも半端ではない。確かに清冶郞に根付けを見せた時、その場の勢いでそんなことを言ったような気がする。
「そっ、そうでした。天竺―ではなく、唐でした。申し訳ございませぬ、八重の思い違いにございました」
「あれは、今は、こちらの清冶郞さまの許にあるの」
八重は、清冶郞の病のことには触れずに、清冶郞にお守り代わりに上げたのだと話した。
「そうなのだ、あの招き猫はたいそうご利益がある。私も八重からその話を聞いたときには半信半疑であったが、嘘ではなかった。私が死にかかっていた時、八重がその招き猫ら願をかけたら、たちどころに病が癒えた。そればかりか、最近は身体の調子もいつになく良い。寿命が三倍に伸びる効験あらたかなお守りだという話は、やはり真だったようだな」
清冶郞が勢い込んで言う。
刹那、お智が何とも言えぬ顔で八重を見た。
その表情は愕くというよりは、おかしくてならぬのを堪えているようである。
「そうなのよ、ね、お智ちゃん、あの根付けは何でも天竺の有名なお坊さまの持ち物だったというだけあり、たいそうご利益のある。ありがたい品なのです」
八重がもっともらしい顔で言うと、お智は笑いを懸命に抑えている顔で相槌を打つ。
「そうそう。滅多とないほどのありがたいお守りなのよねえ」
「八重、だが、私がそなたより聞いたのは確か天竺ではなく、唐のなにがしとかいう僧侶の持ち物だったということだが」
清冶郞は頭が良く、物憶えの良さも半端ではない。確かに清冶郞に根付けを見せた時、その場の勢いでそんなことを言ったような気がする。
「そっ、そうでした。天竺―ではなく、唐でした。申し訳ございませぬ、八重の思い違いにございました」