月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第5章 永遠の別離
叔母は香花を抱きしめ、涙声で言った。
「逃げなさい。そして、もう二度と都に戻ってきてはなりません。あなたは子どもの頃から、賢く強い娘でした。あなたならきっと、一人でも逞しく生きてゆけるはず。でも、けしてこれだけは忘れないでちょうだい。あなたは両班の娘として生まれ育ったのだから、どんなに困っても、けして両班の誇りを失うようなことだけはしないで、妓生になどなろうと思っては駄目よ」
叔母が帰っていった後、香花は渡された巾着を開けてみた。ずっしりと持ち重りのするそれからは、いかにも高価そうな装飾品が出てきた。多分、これらの首飾りや指輪、腕輪を売って、金に換えろということなのだろう。
口煩いと思ったこともあったけれど、両親亡き後、心から頼れる身寄りは叔母一人だったのだ。叔母とは死別したわけではいが、こんな状況で都落ちをすれば、今度はいつ逢えるか―最悪、もう二度と逢えないかもしれない。
「叔母上」
香花は巾着を胸に抱きしめ、号泣した。
「逃げなさい。そして、もう二度と都に戻ってきてはなりません。あなたは子どもの頃から、賢く強い娘でした。あなたならきっと、一人でも逞しく生きてゆけるはず。でも、けしてこれだけは忘れないでちょうだい。あなたは両班の娘として生まれ育ったのだから、どんなに困っても、けして両班の誇りを失うようなことだけはしないで、妓生になどなろうと思っては駄目よ」
叔母が帰っていった後、香花は渡された巾着を開けてみた。ずっしりと持ち重りのするそれからは、いかにも高価そうな装飾品が出てきた。多分、これらの首飾りや指輪、腕輪を売って、金に換えろということなのだろう。
口煩いと思ったこともあったけれど、両親亡き後、心から頼れる身寄りは叔母一人だったのだ。叔母とは死別したわけではいが、こんな状況で都落ちをすれば、今度はいつ逢えるか―最悪、もう二度と逢えないかもしれない。
「叔母上」
香花は巾着を胸に抱きしめ、号泣した。