月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第5章 永遠の別離
香花は光王がくれた蒸し饅頭をひと口頬張る。温かさがじんわりと口にひろがり、思わず熱いものが込み上げた。
「あの―、ありがとう」
ありったけの勇気をかき集めて言ったのに、あっさりと交わされてしまう。
「何が? 俺が何か礼を言われるようなことをしたっけ」
だが、今こそ言うべきだと自らを励ます。
―素直になるのよ、香花。
光王といると何故か素直になれず、反抗的な態度ばかり取ってしまう。きっと、それは眼前のこの男が悪いのだ。自分よりずっと年上のくせに、まるで同じ年の少年のように人をからかってばかりだから、自分もつい、つられてしまうのだ。
「慰めてくれて、ありがと」
とりあえず、蒸し饅頭の礼を言ってみたが、どうも少しズレているような気がする。
違う、そうじゃないでしょと、すかさず心で突っ込みを入れる。
「それと、簪のお礼を言うのも忘れてたから」
ひと息に眼を瞑って言う。
わずかな沈黙。
ゆっくりと眼を開いた彼女の瞳に、呆気に取られた表情の光王が映った。
「何だ、そんなことか、いちいち礼を言うほどのことでもないだろう。あんな安物」
何とも痛烈な皮肉だ。
―何て奴なの。いまだに私が安物呼ばわりしたことを根に持っているんだわ。
「まっ、失礼ね。人がこうしてちゃんと素直に感謝してるのに」
光王は、香花が振り上げた手を身軽にひょいと交わす。
「それが感謝してる人間の態度かねえ」
と、更に憎らしいことを言った。
「何ですって!?」
「あの―、ありがとう」
ありったけの勇気をかき集めて言ったのに、あっさりと交わされてしまう。
「何が? 俺が何か礼を言われるようなことをしたっけ」
だが、今こそ言うべきだと自らを励ます。
―素直になるのよ、香花。
光王といると何故か素直になれず、反抗的な態度ばかり取ってしまう。きっと、それは眼前のこの男が悪いのだ。自分よりずっと年上のくせに、まるで同じ年の少年のように人をからかってばかりだから、自分もつい、つられてしまうのだ。
「慰めてくれて、ありがと」
とりあえず、蒸し饅頭の礼を言ってみたが、どうも少しズレているような気がする。
違う、そうじゃないでしょと、すかさず心で突っ込みを入れる。
「それと、簪のお礼を言うのも忘れてたから」
ひと息に眼を瞑って言う。
わずかな沈黙。
ゆっくりと眼を開いた彼女の瞳に、呆気に取られた表情の光王が映った。
「何だ、そんなことか、いちいち礼を言うほどのことでもないだろう。あんな安物」
何とも痛烈な皮肉だ。
―何て奴なの。いまだに私が安物呼ばわりしたことを根に持っているんだわ。
「まっ、失礼ね。人がこうしてちゃんと素直に感謝してるのに」
光王は、香花が振り上げた手を身軽にひょいと交わす。
「それが感謝してる人間の態度かねえ」
と、更に憎らしいことを言った。
「何ですって!?」