月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第6章 第2話【燕の歌~Swallow song】・新しい町
「俺たちがそもそもここに何をしに来たか、まさかすっかり忘れちまってるわけじゃないだろう?」
「馬鹿にしないでよ、私たちがここに来たのは昼ご飯を調達しにきた―」
言いかけた香花の言葉は突如として遮られた。
「お前は本気で俺に喧嘩を売ってるのか!」
大声で怒鳴られ、香花は露骨に可愛らしい顔をしかめた。
「いきなり耳の傍でそんな馬鹿でかい声出さないでくれない? 耳が聞こえなくなってしまったら、どうしてくれるの」
香花はまだ顔をしかめたまま、光王に近寄り声を潜めた。
「判ってるに決まってるじゃない。この町に当分、腰を落ち着けるつもりだからって、偵察にきたんでしょ」
突然、光王の手が伸び、額を軽く指で弾かれた。
「ちょっと、何するのよ、痛いでしょ」
香花はまるで幼い子のするように、むうと頬を膨らませる。
「判ってるんだったら、最初から、ちゃんと応えろ」
〝でも〟と、香花は最初の部分を思い切り強調する。
「でも、光王。こんなに良い匂いがしてくるんだもの、空きっ腹にはこたえるわよ、このいかにも食欲をそそる匂いは」
光王は呆れたような表情で大仰に天を仰いだ。
「ああ、俺も本当についてないな。どうせ道連れになるなら、こんな色気より食い気の胸ナシ痩せチビじゃなくて、もっと色香漂う豊満な美女の方が良かったのに」
「フン、ご期待に添えなくて申し訳なかったわね」
香花は光王をひと睨みすると、一人で勝手にさっさと歩く。
「馬鹿にしないでよ、私たちがここに来たのは昼ご飯を調達しにきた―」
言いかけた香花の言葉は突如として遮られた。
「お前は本気で俺に喧嘩を売ってるのか!」
大声で怒鳴られ、香花は露骨に可愛らしい顔をしかめた。
「いきなり耳の傍でそんな馬鹿でかい声出さないでくれない? 耳が聞こえなくなってしまったら、どうしてくれるの」
香花はまだ顔をしかめたまま、光王に近寄り声を潜めた。
「判ってるに決まってるじゃない。この町に当分、腰を落ち着けるつもりだからって、偵察にきたんでしょ」
突然、光王の手が伸び、額を軽く指で弾かれた。
「ちょっと、何するのよ、痛いでしょ」
香花はまるで幼い子のするように、むうと頬を膨らませる。
「判ってるんだったら、最初から、ちゃんと応えろ」
〝でも〟と、香花は最初の部分を思い切り強調する。
「でも、光王。こんなに良い匂いがしてくるんだもの、空きっ腹にはこたえるわよ、このいかにも食欲をそそる匂いは」
光王は呆れたような表情で大仰に天を仰いだ。
「ああ、俺も本当についてないな。どうせ道連れになるなら、こんな色気より食い気の胸ナシ痩せチビじゃなくて、もっと色香漂う豊満な美女の方が良かったのに」
「フン、ご期待に添えなくて申し訳なかったわね」
香花は光王をひと睨みすると、一人で勝手にさっさと歩く。