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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第1章 第一話【月下にひらく花】転機

 人と人の出逢いは、まるで見えない二本の糸が絡まり合うのにも似ている。この世には無数の見えない糸が縦横無尽に走っているのに、何故、その数え切れないほどのあまたの糸の中で、誰かと誰かの糸だけが絡み合い、結ばれるのか。宿命に引き寄せられるようにめぐり逢い、烈しく愛する、それがめぐり逢いの不思議だ。
 香花もまた、そうしたこの世の多くの出逢いの一つをこの日、体験することになった。
 その日はまだ梅雨入りしたばかりで、空は今にも泣き出しそうに曇り、陰鬱にひろがっていた。灰色に沈み込んだ庭の一角に、色のうつろわぬ白い紫陽花がひっそりと開いているのが妙に香花の心に残った。

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