月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第6章 第2話【燕の歌~Swallow song】・新しい町
老人が眼をパチパチさせながら、香花と光王を交互に見た。
「そうかい、夫婦じゃないのか。いや、済まんのう。年寄りのとんだ勘違い、早合点か。儂はてっきり、お前さんたちが仲睦まじい夫婦かとばかり思ったがのう」
老人はまた声を上げて笑った。
「こいつは俺の妹だよ、爺さん」
光王が言う傍らで、香花も頷いた。
「そうなんです、妹、妹!」
「爺さん、それじゃ、俺たちはこれで失礼するよ。縁があったら、また逢おう」
光王が軽く片手を上げ背を向けるのに、香花も慌てて軽く頭を下げ、その店を後にした。
「ふむ、どう見ても兄妹というよりは夫婦に見えるが」
遠ざかる二人を見ながら、老人はしきりに首を傾げていた。
香花は思わず手のひらで頬を撫でた。頬だけでなく、身体中が熱い。
光王がさっさと先に立って歩くから、今の自分の赤い顔を見られなくて済むのがありがたい。
それにしても、漢(ハ)陽(ニヤン)を出てからというもの、光王と旅を続けている間に夫婦と間違われたのは、これで何度目になることやら。夫婦でなくても、恋人同士だとか許嫁だと勘違いされたことも再々だ。
宿屋に泊まるときには別々の部屋を頼むのが常だが、大抵はまず夫婦と間違われて同じ部屋を用意された。
光王と一緒にいると、喧嘩ばかりしてしまう。まあ、喧嘩というよりは、気心の知れた友達同士の他愛ない言い合いのようなものではあるが、二人でいると、およそ〝仲睦まじい〟といった雰囲気からは程遠いように思えるのに、何故、こうも妙な勘違いをされることが多いのだろう。全く頭を抱えたくなる。
「そうかい、夫婦じゃないのか。いや、済まんのう。年寄りのとんだ勘違い、早合点か。儂はてっきり、お前さんたちが仲睦まじい夫婦かとばかり思ったがのう」
老人はまた声を上げて笑った。
「こいつは俺の妹だよ、爺さん」
光王が言う傍らで、香花も頷いた。
「そうなんです、妹、妹!」
「爺さん、それじゃ、俺たちはこれで失礼するよ。縁があったら、また逢おう」
光王が軽く片手を上げ背を向けるのに、香花も慌てて軽く頭を下げ、その店を後にした。
「ふむ、どう見ても兄妹というよりは夫婦に見えるが」
遠ざかる二人を見ながら、老人はしきりに首を傾げていた。
香花は思わず手のひらで頬を撫でた。頬だけでなく、身体中が熱い。
光王がさっさと先に立って歩くから、今の自分の赤い顔を見られなくて済むのがありがたい。
それにしても、漢(ハ)陽(ニヤン)を出てからというもの、光王と旅を続けている間に夫婦と間違われたのは、これで何度目になることやら。夫婦でなくても、恋人同士だとか許嫁だと勘違いされたことも再々だ。
宿屋に泊まるときには別々の部屋を頼むのが常だが、大抵はまず夫婦と間違われて同じ部屋を用意された。
光王と一緒にいると、喧嘩ばかりしてしまう。まあ、喧嘩というよりは、気心の知れた友達同士の他愛ない言い合いのようなものではあるが、二人でいると、およそ〝仲睦まじい〟といった雰囲気からは程遠いように思えるのに、何故、こうも妙な勘違いをされることが多いのだろう。全く頭を抱えたくなる。