月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第6章 第2話【燕の歌~Swallow song】・新しい町
「だが、兄さんが何者だとしても、俺は訊きたい。お前さん、今のこの町の様子をどう見た?」
ジャンインの問いかけに、光王は瞳を一瞬、伏せた。この眼前の男をどこまで信用して良いのかと思案しているのだろう。
ややあって、光王が瞳を開き、真正面からジャンインを見つめた。
「活気があって、良いな。町が賑わっている証拠だ」
ジャンインがニヤリと口の端を引き上げる。
「型どおりの科白だな。そんな見せかけだけの姿に、お前さんが騙されるとは思えないが」
刹那、光王が懐から取り出そうとした小刀を、ジャンインは光王の手ごと上から押さえ込んでいた。
「おっと、物騒なことは止めてくれよ。ここは町に一つしかない酒場で、皆、愉しみに来てるんだ。折角の愉しみに水を差すような無粋な真似はしたくない」
「―貴様、何者だ?」
鋭く一瞥する光王を相手に、ジャンインはまるで幼い子どもをあやすかのような余裕の笑みで応えた。
「先ほども話したように、ただの飾り職人さ」
「貴様の方こそ、ただ者とは思えない」
光王が悔しさを滲ませた声音で言うと、ジャンインは不敵な笑みを浮かべた。
「信じて貰えなくても、とにかく妙な気は起こさないで欲しいんだがな。そうすれば、この手も放してやれる」
「判った」
光王の言葉に、ジャンインは押さえていた光王の手をあっさりと放した。
なりゆきを見守る香花は気が気ではなかった。〝天下の大盗賊光王〟を鮮やかな手並みで手玉に取る男、このジャンインという男は並の者ではない。光王の言うように、ただの職人というのは信じがたかった。
ジャンインの問いかけに、光王は瞳を一瞬、伏せた。この眼前の男をどこまで信用して良いのかと思案しているのだろう。
ややあって、光王が瞳を開き、真正面からジャンインを見つめた。
「活気があって、良いな。町が賑わっている証拠だ」
ジャンインがニヤリと口の端を引き上げる。
「型どおりの科白だな。そんな見せかけだけの姿に、お前さんが騙されるとは思えないが」
刹那、光王が懐から取り出そうとした小刀を、ジャンインは光王の手ごと上から押さえ込んでいた。
「おっと、物騒なことは止めてくれよ。ここは町に一つしかない酒場で、皆、愉しみに来てるんだ。折角の愉しみに水を差すような無粋な真似はしたくない」
「―貴様、何者だ?」
鋭く一瞥する光王を相手に、ジャンインはまるで幼い子どもをあやすかのような余裕の笑みで応えた。
「先ほども話したように、ただの飾り職人さ」
「貴様の方こそ、ただ者とは思えない」
光王が悔しさを滲ませた声音で言うと、ジャンインは不敵な笑みを浮かべた。
「信じて貰えなくても、とにかく妙な気は起こさないで欲しいんだがな。そうすれば、この手も放してやれる」
「判った」
光王の言葉に、ジャンインは押さえていた光王の手をあっさりと放した。
なりゆきを見守る香花は気が気ではなかった。〝天下の大盗賊光王〟を鮮やかな手並みで手玉に取る男、このジャンインという男は並の者ではない。光王の言うように、ただの職人というのは信じがたかった。