
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第7章 春の宵
香花がうなだれると、光王の大きな手が頭を撫でた。
「判ったのなら、もう良い。二度と、一人で町に出るな。お前が今日、出逢ったあの若い男は使道の長男だぞ。女好きの使道は妾を大勢あちこちに囲っているらしいが、正室腹の息子はあの男一人らしい。あの息子の口から好色な親父にお前の話が伝わってみろ、大変なことになる。―それに、助平親父の血を引く息子だからな、あの若い方だって迂闊に近づけば、何をされるか知れたものではない」
「あの人が使道の息子? 信じられない」
極悪非道で知られる冷酷な使道全正史の嫡男であり跡取りである全知勇(シヨン)、それがあの若者の名であった。
使道の息子の話など一度も聞いたことがないし、特に問題行動のあるようにも見えない。むしろ、正義感の強そうな清々しい好青年であった。
「マ、似たような歳格好の倅が妾腹にも何人かいて、そっちは親父のひな形のような放蕩息子ばかりらしいが、あいつは珍しくあんな親父の息子には勿体ないと評判のできた人間のようだ。あくまでも噂にすぎないがな」
「噂どおりの方だと思うわよ。今日だって、私が言いかがりをつけられて困っているところを助けて下さったの」
知勇がいなければ、香花は町中で服を脱ぎ、裸にならなければならないところだった。
「判ったのなら、もう良い。二度と、一人で町に出るな。お前が今日、出逢ったあの若い男は使道の長男だぞ。女好きの使道は妾を大勢あちこちに囲っているらしいが、正室腹の息子はあの男一人らしい。あの息子の口から好色な親父にお前の話が伝わってみろ、大変なことになる。―それに、助平親父の血を引く息子だからな、あの若い方だって迂闊に近づけば、何をされるか知れたものではない」
「あの人が使道の息子? 信じられない」
極悪非道で知られる冷酷な使道全正史の嫡男であり跡取りである全知勇(シヨン)、それがあの若者の名であった。
使道の息子の話など一度も聞いたことがないし、特に問題行動のあるようにも見えない。むしろ、正義感の強そうな清々しい好青年であった。
「マ、似たような歳格好の倅が妾腹にも何人かいて、そっちは親父のひな形のような放蕩息子ばかりらしいが、あいつは珍しくあんな親父の息子には勿体ないと評判のできた人間のようだ。あくまでも噂にすぎないがな」
「噂どおりの方だと思うわよ。今日だって、私が言いかがりをつけられて困っているところを助けて下さったの」
知勇がいなければ、香花は町中で服を脱ぎ、裸にならなければならないところだった。
