
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第7章 春の宵
「―光王」
まるで香花の心を読んだかのように、光王が無表情に言った。
「同情は止してくれ。苦労知らずのお前に、同情なんてされたくない」
光王は口の端を歪めた。
「世間じゃ義賊だ何だと言われてるが、〝光の王〟は所詮、そんな掏摸やかっ払いを重ねてた浮浪児たちの集まりがいつしか膨れ上がってできあがった組織さ。どうだ、真相を聞いて、愕いたか? お前のように使道の息子にちょっとくらい優しくされたからって、すぐにボウっとのぼせちまうような世間知らずのねんねには理解できない世界だろう? お前には所詮、両班のお坊ちゃんとの恋愛ごっこがお似合いなんだ」
「そんな言い方って、酷い」
香花の瞳から大粒の涙が零れた。
「そこまで言うのなら、あなたはどうなの? 光王。あなたがどこで何をしようが、何人の女の人と寝ようが、私には関係ないことだけど、到底、他人(ひと)には言えないことをしているようなあなたが私のことをとやかく言えるの?」
「俺が何人もの女の寝ている―?」
光王の眼が意外そうにまたたく。
「あなたは背負い切れないほどの複雑な過去を背負っているって、あの漢陽の酒場の女将さんが言ってた。その中には、あの女将さんとのことも入っているのよね。あなたが売るのは小間物だけじゃないんでしょ」
香花は、つい言ってはならないことを口にしてしまっているのにも気付かない。
まるで香花の心を読んだかのように、光王が無表情に言った。
「同情は止してくれ。苦労知らずのお前に、同情なんてされたくない」
光王は口の端を歪めた。
「世間じゃ義賊だ何だと言われてるが、〝光の王〟は所詮、そんな掏摸やかっ払いを重ねてた浮浪児たちの集まりがいつしか膨れ上がってできあがった組織さ。どうだ、真相を聞いて、愕いたか? お前のように使道の息子にちょっとくらい優しくされたからって、すぐにボウっとのぼせちまうような世間知らずのねんねには理解できない世界だろう? お前には所詮、両班のお坊ちゃんとの恋愛ごっこがお似合いなんだ」
「そんな言い方って、酷い」
香花の瞳から大粒の涙が零れた。
「そこまで言うのなら、あなたはどうなの? 光王。あなたがどこで何をしようが、何人の女の人と寝ようが、私には関係ないことだけど、到底、他人(ひと)には言えないことをしているようなあなたが私のことをとやかく言えるの?」
「俺が何人もの女の寝ている―?」
光王の眼が意外そうにまたたく。
「あなたは背負い切れないほどの複雑な過去を背負っているって、あの漢陽の酒場の女将さんが言ってた。その中には、あの女将さんとのことも入っているのよね。あなたが売るのは小間物だけじゃないんでしょ」
香花は、つい言ってはならないことを口にしてしまっているのにも気付かない。
