
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第7章 春の宵
行商の小間物売りが私に無体にも襲いかかってきて、辱められたと私が良人に告げれば、そなたは商売どころか、生命すらも危うくなるでしょう。
そこまで言われて、否やと言えるはずもなかった。
初めてのときは、光王自身、随分と屈辱に震えた。確かに大枚は手に入ったけれど、そこまで―まるで男娼紛いのことをして手に入れた金はあまりにも穢らわしくて、その日は夜更けまで酒場で飲み明かし、身体を売って稼いだ金はすべて使い果たした。
深酒をした光王は、例の酒場の女将を狂ったように求め、何度も烈しく抱いた。
幾ら抱いても精を放っても、身体の火照りは冷めない。なのに、心だけはしんと冷え切っていた。
―誰か、俺を解放してくれ。このやるせなさ、苦しさから俺を解き放って自由にしてくれ。
光王は女将を抱きながら、涙を流した。
―あんた、随分と辛いことがあったんだね。
女将は理由など問いはしなかった。ただ黙って光王の好きなようにさせ、最後は泣いている光王をまるで母親のように抱きしめ、その背を撫でてくれた。
不思議なことだった。夜通し幾度も情を交わし、口にはできないような淫らなことまでしておきながら、そのときの女将と光王の間には男女の行為の嫌らしさよりもむしろ、子が母親にひたすら甘え、むしゃぶりつくような懸命さがあった。
それから、光王は求められれば、金と引き替えに女と寝るようになった。最初は身体と心が別々に引き裂かれるような気がしていたにも拘わらず、やがて、平気になった。
そこまで言われて、否やと言えるはずもなかった。
初めてのときは、光王自身、随分と屈辱に震えた。確かに大枚は手に入ったけれど、そこまで―まるで男娼紛いのことをして手に入れた金はあまりにも穢らわしくて、その日は夜更けまで酒場で飲み明かし、身体を売って稼いだ金はすべて使い果たした。
深酒をした光王は、例の酒場の女将を狂ったように求め、何度も烈しく抱いた。
幾ら抱いても精を放っても、身体の火照りは冷めない。なのに、心だけはしんと冷え切っていた。
―誰か、俺を解放してくれ。このやるせなさ、苦しさから俺を解き放って自由にしてくれ。
光王は女将を抱きながら、涙を流した。
―あんた、随分と辛いことがあったんだね。
女将は理由など問いはしなかった。ただ黙って光王の好きなようにさせ、最後は泣いている光王をまるで母親のように抱きしめ、その背を撫でてくれた。
不思議なことだった。夜通し幾度も情を交わし、口にはできないような淫らなことまでしておきながら、そのときの女将と光王の間には男女の行為の嫌らしさよりもむしろ、子が母親にひたすら甘え、むしゃぶりつくような懸命さがあった。
それから、光王は求められれば、金と引き替えに女と寝るようになった。最初は身体と心が別々に引き裂かれるような気がしていたにも拘わらず、やがて、平気になった。
