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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第7章 春の宵

 室の障子戸をわずかに開けると、既に夜の色に染まりきった空に浮かぶ半月が見える。丁度、香花が買ってきてくれた蒸し饅頭を半分に割ったような形をしている。
「香花、お前は今、どこにいて、何を考えている?」
 彼の瞼に、少女の泣き顔がまた甦ってくる。
 光王は切なげな表情で月を見上げ続けた。

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