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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第7章 春の宵

「そなたの名は?」
 顔を覗き込まれて問われ、香花は頬を染めて応える。
「香花と申します」
「そなたにぴったりの名前だね。では、香花。この詩の題名は何が良いと思う?」
 香花は少し考えた後、応えた。
「名残の尽きない早春の夜を歌ったものですから、〝春の宵〟がよろしいかと」
「なるほど、良い題だ。では、香花の言うように、この詩は〝春の宵〟としよう」
 知勇は香花を腕に抱き、梅の花を見上げる。白い可憐な花がまた、ほのかに香った。

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