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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第8章 すれ違い

 こうして光王の顔を間近で見るのも久しぶりのような気がする。相変わらず、見惚れるほど綺麗な顔、秀でた額、整った鼻梁、切れ長の涼しげな眼許、時に黄金色や蒼色にも見える不思議な双眸。
 光王の顔の輪郭を辿っていた香花の視線が、ふと止まった。
 形の良い唇―、あの唇が私の唇に触れた―。
 そう意識した刹那、頬が熱くなり、明らむのが判った。
 私ったら、何を馬鹿なことを。
 一人で慌てている香花の耳を、光王の苛立ちを含んだ声音が打つ。
「おい、香花。俺の言うことを聞いてるのか?」
「あ、ごめんなさい。つい考え事をしてしまって。今、何て言ったの、光王」
「お前の方にこそ、苦労をさせるなって言ったんだよ」
 光王の顔から笑顔が消えている。やっと戻った笑顔だったのに―。
 香花は泣きそうになってしまった。
 香花の心も知らず、光王は憮然として言う。
「俺が喋ってることに気付きもしないほど、何を夢中になって考えてたんだ?」
 険のある物言いに、香花は涙を堪えた。
「本当にごめんなさい。悪かったわ」
「もう、良いよ」

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