月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第8章 すれ違い
その瞬間、雷に打たれたかのような衝撃が全身を駆け抜けた。
判らない。何がどうなっているのか判らない。確かに、自分は光王が好きだ。でも、それは、あくまでも兄に対する親愛の情に近いはず。
私が好きなのは明善さま一人だけ。
香花は自分に言い聞かせる。
「優しい人なのに」
香花は言い訳するように、幾度も同じ科白を繰り返す。
光王が一瞬、うつむいた。再び顔を上げた時、彼は見知らぬ人に変化していた。そこには何の表情も浮かんではいなかった。ただ、すべての感情を消し去った瞳から放たれた視線が香花の疑問を射貫いていた。
「あいつは自分の父親が陰でどんな悪だくみを企んでるかを知りながら、のうのうと暮らしている。あいつが贅沢な暮らしをしてるために使われる金は、すべて民から搾り取ったものなんだぞ」
「あの男は何も悪くない、関係ないのよ?」
叫ぶのに、光王もまた怒鳴った。
「何故、知っているなら、何とかしようとしない? 三つのガキでもあるまいに、十八といえば、もう立派な大人だ。ご立派な親父の後ろに隠れて、自分は何も知りませんで済む歳じゃない」
悔しいけれど、何も言い訳できなかった。
判らない。何がどうなっているのか判らない。確かに、自分は光王が好きだ。でも、それは、あくまでも兄に対する親愛の情に近いはず。
私が好きなのは明善さま一人だけ。
香花は自分に言い聞かせる。
「優しい人なのに」
香花は言い訳するように、幾度も同じ科白を繰り返す。
光王が一瞬、うつむいた。再び顔を上げた時、彼は見知らぬ人に変化していた。そこには何の表情も浮かんではいなかった。ただ、すべての感情を消し去った瞳から放たれた視線が香花の疑問を射貫いていた。
「あいつは自分の父親が陰でどんな悪だくみを企んでるかを知りながら、のうのうと暮らしている。あいつが贅沢な暮らしをしてるために使われる金は、すべて民から搾り取ったものなんだぞ」
「あの男は何も悪くない、関係ないのよ?」
叫ぶのに、光王もまた怒鳴った。
「何故、知っているなら、何とかしようとしない? 三つのガキでもあるまいに、十八といえば、もう立派な大人だ。ご立派な親父の後ろに隠れて、自分は何も知りませんで済む歳じゃない」
悔しいけれど、何も言い訳できなかった。