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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第8章 すれ違い

 もし彼が異腹の弟たちのように卑劣漢の父親のどうしようもなさを受け継いでいるなら、彼は苦しまなくても済んだはずだ。父を真似て、民から巻き上げた金を湯水のように使い、女を見境なく漁り、酒色に溺れる怠惰な日々にどっぷりと浸かって満足していたろう。
 優しいから、誰より苦しまなければならないなんて、そんなのは、あまりにも酷い。
 香花は泣きながら、知勇がこれまで抱えてきた重い孤独と葛藤に想いを馳せた。

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