
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第9章 燕の歌
知勇が幾度も頷いた。
「先刻、そなたは彼(か)の人の言葉を語った。何と愛おしげにその人の想い出を語るのだろうと思っていた。そなたはが慕っているというのは、その方なのだな」
香花が頷いて見せると、知勇は怒るどころか、優しい微笑みを浮かべた。
「何だか、少し妬けるな。もっとも、既に亡くなられた方が競争相手では、最初から勝ち目などないが」
しばらく静かな時間が流れた。
何を話すわけでもなく、ただ同じ空間にいて、同じ刻を共有しているだけ。それでも、居心地良く感じてしまうところまで、明善と似ている。
「先刻、そなたは彼(か)の人の言葉を語った。何と愛おしげにその人の想い出を語るのだろうと思っていた。そなたはが慕っているというのは、その方なのだな」
香花が頷いて見せると、知勇は怒るどころか、優しい微笑みを浮かべた。
「何だか、少し妬けるな。もっとも、既に亡くなられた方が競争相手では、最初から勝ち目などないが」
しばらく静かな時間が流れた。
何を話すわけでもなく、ただ同じ空間にいて、同じ刻を共有しているだけ。それでも、居心地良く感じてしまうところまで、明善と似ている。
