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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第9章 燕の歌

 香花の呼びかけに、知勇が振り向き、やわらかく微笑する。
 二羽の燕はまだ戯れ合うように飛んでいたが、やがて、空高く舞い上がり、空の蒼に吸い込まれた。 
 燕が見えなくなっても、知勇は長い間、その先を眼で追っていた。
 知勇が少し離れた場所で待っていた伴人と共に再び馬上の人となって帰っていったのは、更にそれから四半刻を経た後のことである。

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