
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第9章 燕の歌
「妓房で深夜まで妓生と戯れて酒を過ごし、更にお帰りになって、若い側女と乱痴気騒ぎですか」
知勇の言葉は平坦ではあったが、明らかに咎める響きがある。
「煩い、そなたが父を非難するなど、十年は早いわ」
正史は当然ながら不機嫌である。
「父上、あの超全徳という商人とは手を切って下さい。あの者は良からぬ匂いがします。お側に置いても、父上に取り入り、父上を堕落させるだけでしょう」
知勇が真摯に言うのにも、正史は鼻で笑い飛ばした。
「愚か者、あの者のお陰で、我らがどれだけ儲かったと思うておるのだ。そなたを学問所にやる金も書物を買う金も、皆、そうやって儂が得た金なのだぞ?」
正史は作戦を変え、息子を宥めるような口調で言った。
「そなたはまだ若いゆえ、潔癖なのは判るが、世の中は綺麗事だけでは済まないのだ。書物にも書いてあろう、清濁併せ呑んでこそ、この世の真理も自ずと知れると」
知勇の言葉は平坦ではあったが、明らかに咎める響きがある。
「煩い、そなたが父を非難するなど、十年は早いわ」
正史は当然ながら不機嫌である。
「父上、あの超全徳という商人とは手を切って下さい。あの者は良からぬ匂いがします。お側に置いても、父上に取り入り、父上を堕落させるだけでしょう」
知勇が真摯に言うのにも、正史は鼻で笑い飛ばした。
「愚か者、あの者のお陰で、我らがどれだけ儲かったと思うておるのだ。そなたを学問所にやる金も書物を買う金も、皆、そうやって儂が得た金なのだぞ?」
正史は作戦を変え、息子を宥めるような口調で言った。
「そなたはまだ若いゆえ、潔癖なのは判るが、世の中は綺麗事だけでは済まないのだ。書物にも書いてあろう、清濁併せ呑んでこそ、この世の真理も自ずと知れると」
