
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第9章 燕の歌
「三年前、この地では梅雨に長雨が続き、夏は冷夏で、記録的な不作となりました。そんな年が二年も続けば、それだけで民は飢え死にしてしまう。都でも似たような事態が起こり、国王殿下は国庫を開き、大臣たちにも呼びかけ、飢えに苦しむ民に粥を無料でふるまわせた。ですが、父上、あなたがしたことは何でしたか? 豊作だった年に大目に取り上げた年貢を都にはその半分程度しか納めず、残りはすべて自分の蔵に納めた。そして、飢饉の年に、その米に数倍の値をつけて売りつける。あなたと全徳はそんなあくどい商法でしこたま儲けていますよね。そんなことをこの私が知らないとでも?」
知勇の淡々とした宣言に、正史は顔色を変えながらも平静を装った。
「それがどうしたというのだ? 先刻も申し聞かせたであろう。そなたのために遣っている金もすべて、そうやって得ているのだ」
「私は、そのような汚い、薄汚れた金まで使って学問をしたくはありません」
「なに?」
正史の顔色が変わった。
知勇の淡々とした宣言に、正史は顔色を変えながらも平静を装った。
「それがどうしたというのだ? 先刻も申し聞かせたであろう。そなたのために遣っている金もすべて、そうやって得ているのだ」
「私は、そのような汚い、薄汚れた金まで使って学問をしたくはありません」
「なに?」
正史の顔色が変わった。
