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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第9章 燕の歌

 どうか約束を忘れたり心変わりをしないで。私はあなたのもの、あなたは私の燕。
 鼻腔をくすぐる梅花の香りが漂ってくる。花の香は、あのひとを思い出させる。こうしていると、すぐ側にあのひとがいるようで、到底、死んでしまっただなんて信じられない。
 涼やかで透き通った瞳に哀しみと孤独を映していた、優しいひと。
枝に止まった燕がひと声啼いて、飛んでいった。

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