月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第1章 第一話【月下にひらく花】転機
香花は、自分がとてももどかしかった。多分、明善の眼には自分は家庭教師というよりは、彼の二人の子どもたちと変わらない子どもに見えているに違いない。
三十歳の明善に比べて、香花はまだ十四歳だ。その年の差が、今はただ恨めしい。
言いようのない淋しさが湧き上がる。香花は立ち上がると、一礼し、静かに部屋を出た。廊下からは広い庭が一望できる。半月前、初めて見た日はまだ白っぽかった紫陽花のひと群れは既にうっすらと蒼く色づいていた。
三十歳の明善に比べて、香花はまだ十四歳だ。その年の差が、今はただ恨めしい。
言いようのない淋しさが湧き上がる。香花は立ち上がると、一礼し、静かに部屋を出た。廊下からは広い庭が一望できる。半月前、初めて見た日はまだ白っぽかった紫陽花のひと群れは既にうっすらと蒼く色づいていた。