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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第2章 縁(えにし)~もう一つの出逢い~

 縁(えにし)~もう一つの出逢い~

 その翌日の朝、子どもたちの室では香花の声が響いていた。
「それでは、今日は、いつもと違う詩を読んでみたいと思います」
 前置きしてから、読み始める。いつも漢字の隙間なく並ぶ難しげな書物ばかりなので、たまにはこんなのも良いかと思ったのだ。
 読み終えたところで、早速、姉の桃華から質問が飛んでくる。こういった点は、桃華はとても勉強熱心である。
 最初は与えられる質問に応えるだけであった桃華だが、今は少し変化が見られているのだ。興味を引かれたり疑問に感じた事柄があれば、自分の方から積極的に問いかけてくる。
 相変わらず学問の時間以外には言葉を交わすこともないけれど、これだけでも、まずは進歩だといえるだろう。
「先生、その詩では女官を花と鳥に喩えています。何故ですか?」
 香花は微笑んだ。
「とても良い質問ですね。お嬢さん(アツシー)、何故、女官を花や鳥に喩えるか、それを知ることはとても大切です」
 と、桃華が黒い大きな瞳を輝かせた。
「先生、それは、女官が国王殿下のただお一人のものであるということからきているのですか」
 香花は頷いた。

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