
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第10章 第三話【名もなき花】・少年の悲哀
少年の悲哀
シンバルの音が高らかに鳴り響くと、人々の興奮はいやが応にも高まってゆく。
ざっと見積もったとしても、その場に居合わせた見物人は二、三十人はいるはずだ。彼らの顔は皆、期待と好奇心に満ち満ち、眼前でこれからくり広げられるであろう光景を固唾を呑んで見守っている。
その観衆の興奮を更に増し、かき立てるかのようにシンバルの音は徐々に大きくなる。彼らがぐるりと輪になって取り囲む中央では、今、まさに男面と女面を被った二人の踊りが終わったところであった。
男面は両班(ヤンバン)―貴族を表し、女面はその奥方といったところだ。浮気ばかりをする良人を懲らしめてやろうと一計を案じた妻が妓房(キバン)から深夜帰宅した良人の通り道に予め油を塗っておく。
何も知らぬ良人は愚かにもまんまと妻の企みにかかり、脚を取られて見事なまでの鮮やかさですってんころりんと転ぶ。弾みでしたたか腰と尻を打ちつけた良人の前に堂々と現れた妻に、良人は泣き伏して赦しを乞い、もう二度と妓生(キーセン)遊びはしないと約束するといった内容だ。
そのいかにも滑稽な喜劇を二人の男が演じているから、余計に笑いを誘われる。むろん、奥方役の方は堂に入った女装をしている。
シンバルの音が高らかに鳴り響くと、人々の興奮はいやが応にも高まってゆく。
ざっと見積もったとしても、その場に居合わせた見物人は二、三十人はいるはずだ。彼らの顔は皆、期待と好奇心に満ち満ち、眼前でこれからくり広げられるであろう光景を固唾を呑んで見守っている。
その観衆の興奮を更に増し、かき立てるかのようにシンバルの音は徐々に大きくなる。彼らがぐるりと輪になって取り囲む中央では、今、まさに男面と女面を被った二人の踊りが終わったところであった。
男面は両班(ヤンバン)―貴族を表し、女面はその奥方といったところだ。浮気ばかりをする良人を懲らしめてやろうと一計を案じた妻が妓房(キバン)から深夜帰宅した良人の通り道に予め油を塗っておく。
何も知らぬ良人は愚かにもまんまと妻の企みにかかり、脚を取られて見事なまでの鮮やかさですってんころりんと転ぶ。弾みでしたたか腰と尻を打ちつけた良人の前に堂々と現れた妻に、良人は泣き伏して赦しを乞い、もう二度と妓生(キーセン)遊びはしないと約束するといった内容だ。
そのいかにも滑稽な喜劇を二人の男が演じているから、余計に笑いを誘われる。むろん、奥方役の方は堂に入った女装をしている。
