
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第10章 第三話【名もなき花】・少年の悲哀
ジャーンとシンバルが鳴り、人々が息を呑んで成り行きを見守る。異様な静けさが満ちる中、景福が最後の一投を投げた。中には思わず顔を背ける女もいる。
ナイフが唸り、速度を増す。鋭い音と共に、それは幼い少年のまさに頭頂部脇に刺さった。
「良いぞ、よくやった」
「よっ、朝鮮一」
と口々にかけ声がかかり、顔を背けた女たちは思わず涙ぐむ始末。
あまたの見物人の中に混じっていた香花(ヒヤンファ)もまた、我知らずホウと大きな息を吐き出していた。
「凄いわ、まるで神業ね」
言うともなしに呟いても、傍らの光王(カンワン)は憮然として佇んでいて、ろくに返事もしない。
「ねえ、光―」
言いかけた香花に、光王は舌打ちを聞かせた。
「俺はこういうのはあまり気に入らねえな。これじゃ、まるで人の生命のやり取りを見せ物にしてるのと同じだ。しかも相手は子どもだぞ? 子ども同士で、しかも同じ血を分けた兄弟でこんなことをさせるなんて、どうかしている」
ナイフが唸り、速度を増す。鋭い音と共に、それは幼い少年のまさに頭頂部脇に刺さった。
「良いぞ、よくやった」
「よっ、朝鮮一」
と口々にかけ声がかかり、顔を背けた女たちは思わず涙ぐむ始末。
あまたの見物人の中に混じっていた香花(ヒヤンファ)もまた、我知らずホウと大きな息を吐き出していた。
「凄いわ、まるで神業ね」
言うともなしに呟いても、傍らの光王(カンワン)は憮然として佇んでいて、ろくに返事もしない。
「ねえ、光―」
言いかけた香花に、光王は舌打ちを聞かせた。
「俺はこういうのはあまり気に入らねえな。これじゃ、まるで人の生命のやり取りを見せ物にしてるのと同じだ。しかも相手は子どもだぞ? 子ども同士で、しかも同じ血を分けた兄弟でこんなことをさせるなんて、どうかしている」
