
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第10章 第三話【名もなき花】・少年の悲哀
ナイフ投げそのものは確かによく見かける芸ではあるけれど、光王は一座の親方がこれを子どもにさせていることに立腹しているらしい。きれいすぎるほど美しい面には明らかに嫌悪の表情がありありと浮かんでいる。
それも無理からぬことだと香花は内心頷かずにはいられない。光王はかつて、都でも名を馳せた天下の大盗賊であった。盗賊集団〝光の王〟の頭領として数十人の仲間を率いてきた。
しかも、〝盗賊光王〟は、ただの盗っ人ではなく、庶民たちから仏のように崇め慕われる義賊だったのだ。自分たちの手許にはほんの活動資金ほどしか残さず、奪い取った財宝はすべて民にばらまいていた。
光王が盗みに入るのはいずれもが悪名の高い両班か商人―要するに貧しい者を泣かせ、搾り取るだけ搾り取ってゆく輩に限られていた。
従って、役人からは眼の仇にされていたが、庶民たちからは絶大な支持を得ていたのである。彼こそを〝真の王〟だと呼ぶ者もいたほどだった。
それも無理からぬことだと香花は内心頷かずにはいられない。光王はかつて、都でも名を馳せた天下の大盗賊であった。盗賊集団〝光の王〟の頭領として数十人の仲間を率いてきた。
しかも、〝盗賊光王〟は、ただの盗っ人ではなく、庶民たちから仏のように崇め慕われる義賊だったのだ。自分たちの手許にはほんの活動資金ほどしか残さず、奪い取った財宝はすべて民にばらまいていた。
光王が盗みに入るのはいずれもが悪名の高い両班か商人―要するに貧しい者を泣かせ、搾り取るだけ搾り取ってゆく輩に限られていた。
従って、役人からは眼の仇にされていたが、庶民たちからは絶大な支持を得ていたのである。彼こそを〝真の王〟だと呼ぶ者もいたほどだった。
