
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第10章 第三話【名もなき花】・少年の悲哀
義賊をしていた頃、光王の表の顔は小間物売りの行商人だった。たまに市に露店を出すことはあっても、基本的には店を持たず町中を品物の入った荷を負うて売り歩くのだ。
香花の方は、落ちぶれてはいても一応は両班の娘として生まれ育った。父は文官と言えば聞こえは良いが、しがない下級官吏であった。聟養子であった父が急な心臓発作で亡くなった後、実家の跡目を継ぐのは十四歳の香花のみであった。
今や金(キム)氏は没落どころか、家門が絶える寸前で、香花は何とかして落ちぶれた家門を立て直そうと承旨をしていた明善の屋敷に彼の二人の子どもたちの家庭教師として雇われることになったのである。それが明善との運命的な出逢いとなった―。
明善はあまりにも重く壮絶な過去を持つ男であった。
彼は若き日、左議(チヤイ)政(ジヨン)沈壮成に愛妻を差し出すように強要され、荘成に辱められた妻は自ら首を括って死んだ。復讐に燃える彼は荘成の国王暗殺という実に空怖ろしい陰謀に乗ったふりをして、処刑されてしまったのだった。
香花の方は、落ちぶれてはいても一応は両班の娘として生まれ育った。父は文官と言えば聞こえは良いが、しがない下級官吏であった。聟養子であった父が急な心臓発作で亡くなった後、実家の跡目を継ぐのは十四歳の香花のみであった。
今や金(キム)氏は没落どころか、家門が絶える寸前で、香花は何とかして落ちぶれた家門を立て直そうと承旨をしていた明善の屋敷に彼の二人の子どもたちの家庭教師として雇われることになったのである。それが明善との運命的な出逢いとなった―。
明善はあまりにも重く壮絶な過去を持つ男であった。
彼は若き日、左議(チヤイ)政(ジヨン)沈壮成に愛妻を差し出すように強要され、荘成に辱められた妻は自ら首を括って死んだ。復讐に燃える彼は荘成の国王暗殺という実に空怖ろしい陰謀に乗ったふりをして、処刑されてしまったのだった。
