
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第10章 第三話【名もなき花】・少年の悲哀
香花は、おやと首を傾げた。
綱の上を軽やかに、まるで平地を歩くかのような脚取りで進む妖艶な美女の眼鼻立ちがこれまた、先刻の兄弟に酷似しているのだ。
すっきりと切れ上がった眼許は殊に写し取ったようで、歳格好からすれば、彼女が兄弟の母であるとも察せられる。
綱の高さは民家の屋根ほどもあるが、美女は余裕たっぷりに時には優雅にチマの裾をつまんで男たちの眼を白い脹ら脛に集めながら、行きつ戻りつしている。
綱の上を何回かゆっくりと往復した後、美女が手にした扇をさっと開いた。扇を高々と掲げ、いきなり走り出した―かのように香花には見えた。
あたかも駆けるようにスキップするかのような脚取りで細い綱を自在に行き来する。固唾を呑んでいた見物人たちの誰からともなくパチパチと手が鳴り始め、やがて凄まじい拍手が起こった。
親方が面目を施した顔で得意気に披露する。
「これなる芸をご披露しましたのは、先ほどナイフ投げをお見せしました景福の母恵(ヘ)京(ギヨン)にございます!!」
綱の上を軽やかに、まるで平地を歩くかのような脚取りで進む妖艶な美女の眼鼻立ちがこれまた、先刻の兄弟に酷似しているのだ。
すっきりと切れ上がった眼許は殊に写し取ったようで、歳格好からすれば、彼女が兄弟の母であるとも察せられる。
綱の高さは民家の屋根ほどもあるが、美女は余裕たっぷりに時には優雅にチマの裾をつまんで男たちの眼を白い脹ら脛に集めながら、行きつ戻りつしている。
綱の上を何回かゆっくりと往復した後、美女が手にした扇をさっと開いた。扇を高々と掲げ、いきなり走り出した―かのように香花には見えた。
あたかも駆けるようにスキップするかのような脚取りで細い綱を自在に行き来する。固唾を呑んでいた見物人たちの誰からともなくパチパチと手が鳴り始め、やがて凄まじい拍手が起こった。
親方が面目を施した顔で得意気に披露する。
「これなる芸をご披露しましたのは、先ほどナイフ投げをお見せしました景福の母恵(ヘ)京(ギヨン)にございます!!」
