月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第11章 謎の女
謎の女
蜜色の夕陽が地面を真っすぐに照らしている。その日の夕刻、香花は庭に出ていた。
二人の住まいは村の外れにぽつんと一件だけ佇んでいる。もっとも、すべての家を合わせても十数件にしかすぎない貧しい農村ゆえ、隣の家に行くにも時間がかかるほど離れている。
その仕舞屋は光王が村長から格安で借りている。広い部屋と元は物置代わりの納戸だったのであろう狭い部屋とふた部屋しかないが、煮炊きのできる厨房代わりの土間もついているし、二人だけで暮らすには十分な広さだ。普段、光王が広い方を、香花が狭い室を使っている。
ここに住むようになって真っ先に光王がしたのは、家の前に囲いを作り、庭らしきものを作ったことだった。その庭に光王は小さな畑を作り、更に隣家からつがいの鶏を譲り受け、放し飼いにした。そのお陰で、野菜は自家製のものを食べられるし、毎日、産みたての卵を料理に使える。
光王は早朝、荷を背負って家を出て、夕刻―丁度、今頃の時間に帰ってくる。昼間は町で済ませるため、今日のように午後から家にいることは珍しい。
蜜色の夕陽が地面を真っすぐに照らしている。その日の夕刻、香花は庭に出ていた。
二人の住まいは村の外れにぽつんと一件だけ佇んでいる。もっとも、すべての家を合わせても十数件にしかすぎない貧しい農村ゆえ、隣の家に行くにも時間がかかるほど離れている。
その仕舞屋は光王が村長から格安で借りている。広い部屋と元は物置代わりの納戸だったのであろう狭い部屋とふた部屋しかないが、煮炊きのできる厨房代わりの土間もついているし、二人だけで暮らすには十分な広さだ。普段、光王が広い方を、香花が狭い室を使っている。
ここに住むようになって真っ先に光王がしたのは、家の前に囲いを作り、庭らしきものを作ったことだった。その庭に光王は小さな畑を作り、更に隣家からつがいの鶏を譲り受け、放し飼いにした。そのお陰で、野菜は自家製のものを食べられるし、毎日、産みたての卵を料理に使える。
光王は早朝、荷を背負って家を出て、夕刻―丁度、今頃の時間に帰ってくる。昼間は町で済ませるため、今日のように午後から家にいることは珍しい。