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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第11章 謎の女

 香花以外の女なんて、要らない。香花しか、抱きたい女はいない。
 香花はまだ十五歳で、おまけに大切に育てられた両班の娘だ。あの娘の頭の中は難しい学問やら文字は一杯詰まっていても、世間のことや男女のこととなると、からきし駄目なのだ。
 そんな香花だからこそ、尚更愛おしく思え、大切にしてやりたい、守ってやりたいと思うのに、日頃から抑えに抑えた恋情は時折、こうして、行き場を求めて爆発してしまう。
 何とも大人げないことだと、自己嫌悪に陥りそうだ。
 あの女と香花は似ている。
 今日、ミリョンとかいう女を見たときは、流石に驚愕した。多少のことには愕かず、また愕きを表に出さないように極力気をつけてきたつもりだが、ミリョンがあまりにもあの女―清花(チヨンファ)に似ていたので、思わず束の間、我を忘れてしまった。
 まるで清花が―もう六年も前に自分の前から姿を消した女が再び舞い戻ってきたのかと錯覚してしまったほど、怖ろしいほどミリョンは清花に生き写しであった。

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