月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第11章 謎の女
光王は盛大な溜息をつき、拳を自分の頭に思いきり打ちつけた。
どうして、いつもいつも、香花相手だと空回りばかりするんだ?
これが他の女なら、歯の浮くようなお世辞でも、その気にさせる笑顔や流し目の幾つでもくれてやれるのに、香花を前にすると、まるで十かそこいらのガキのように意固地になってしまう。
それでも、今朝ばかりは違った。
ちゃんと香花の顔を見て、昨夜は言い過ぎたと謝るつもりだったのだ。
昨夜、光王は妓房に行った。最初は喧嘩して出ていった香花の身が心配でならず、出てゆく気もなかったのだが、香花が戻ってきて自室に閉じこもった後、どうにもやり切れなくて、家を飛び出したのだ。
気が付けば町まで来ていて、町に一軒しかない妓房に揚がっていた。
そこで〝―月(ウォル)〟とかいう妓生を敵娼に二階の一室で浴びるように酒を呑んだところまでは記憶に残っている(大変失礼なことではあるが、彼の記憶には彼女の名前が抜け落ちている)。しかし、その後はもう、ぷつりと糸が切れたように一切の記憶がなく、気が付いたときには既に翌朝だった。
どうして、いつもいつも、香花相手だと空回りばかりするんだ?
これが他の女なら、歯の浮くようなお世辞でも、その気にさせる笑顔や流し目の幾つでもくれてやれるのに、香花を前にすると、まるで十かそこいらのガキのように意固地になってしまう。
それでも、今朝ばかりは違った。
ちゃんと香花の顔を見て、昨夜は言い過ぎたと謝るつもりだったのだ。
昨夜、光王は妓房に行った。最初は喧嘩して出ていった香花の身が心配でならず、出てゆく気もなかったのだが、香花が戻ってきて自室に閉じこもった後、どうにもやり切れなくて、家を飛び出したのだ。
気が付けば町まで来ていて、町に一軒しかない妓房に揚がっていた。
そこで〝―月(ウォル)〟とかいう妓生を敵娼に二階の一室で浴びるように酒を呑んだところまでは記憶に残っている(大変失礼なことではあるが、彼の記憶には彼女の名前が抜け落ちている)。しかし、その後はもう、ぷつりと糸が切れたように一切の記憶がなく、気が付いたときには既に翌朝だった。