月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第11章 謎の女
ただ気性の良い女のようで、彼女は遊女にしてはふさわしくなく大口を開けて呵々と笑いながら、彼の背をピシャリと叩いたのだ。
―奥さんと喧嘩したんで、自棄になってここに来たんでしょう? 好きで好きでたまらない恋女房がいる旦那には、ここは無用の長物ですよ。
どうやら、光王は寝言で香花の名を呼んでいたらしいのだ。あろうことか、更に〝香花、悪かった。俺が言い過ぎた、許してくれ〟と連呼していたという。
女から殊の顛末を聞いて、彼はまさに顔から火が出るほど恥ずかしかった。こんな情けない想いをしたことは、いまだかつてないとさえいえる。
―妓房に来て、女も抱かずに大酒かっ喰らって眠るだなんて、旦那も酔狂っていうか、風変わりですねぇ。
女は光王と女房と喧嘩して飛び出してきた亭主だと勝手に思い込んだらしく、酔いつぶれた光王を抱えて布団に入れ、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれたようだ。
―奥さんと喧嘩したんで、自棄になってここに来たんでしょう? 好きで好きでたまらない恋女房がいる旦那には、ここは無用の長物ですよ。
どうやら、光王は寝言で香花の名を呼んでいたらしいのだ。あろうことか、更に〝香花、悪かった。俺が言い過ぎた、許してくれ〟と連呼していたという。
女から殊の顛末を聞いて、彼はまさに顔から火が出るほど恥ずかしかった。こんな情けない想いをしたことは、いまだかつてないとさえいえる。
―妓房に来て、女も抱かずに大酒かっ喰らって眠るだなんて、旦那も酔狂っていうか、風変わりですねぇ。
女は光王と女房と喧嘩して飛び出してきた亭主だと勝手に思い込んだらしく、酔いつぶれた光王を抱えて布団に入れ、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれたようだ。