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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第11章 謎の女

つくづく俺も馬鹿な男だな。
 光王はまた大きな吐息をつき、思わず顔をしかめる。とりあえずは、この頭痛が治まらないことには、どうにもなりそうにない。
 仲直りはそれからということにしよう。横になろうとして、彼は眼を瞑った。
 それから、ほどなく眠りに落ちたようで、目ざめた時、既に陽は高くなっていた。香花の部屋へと続く扉が少しだけ開いて、何か置いてある。痛む頭を抑え、立ち上がって確かめにゆくと、それは碗に入った煎じ薬だった。
 特有の匂いが漂ってくる。恐らく、淹れたばかりなのだろう。香花が気をきかせて、二日酔いに効く煎じ薬を持ってきたのだ。
 光王は碗を手に取り、ひと口含む。
 ほのかな苦みが口中にひろがった。
彼はまるで愛おしいものに触れるように、まだほのかな温もりの残る碗をそっと人さし指で撫でた。

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