月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第12章 半月
「本当に綺麗な月ね。手を伸ばせば、届きそうなほどだわ」
香花は改めて月を見上げた。
今夜は月が随分と近く見える。夜空が晴れ渡っているせいか、黄褐色の月面にくっきりと陰が刻まれているのまで克明に見て取れる。
「―」
光王からの応(いら)えはない。
香花は訝しく思い、何げなく視線を動かす。光王の精悍に整った貌をそっと窺うと、彼はぼんやりと月を仰いでいる。
また、あの瞳だ。
香花の胸に言い知れぬ感情が湧き起こる。先日、喧嘩したときも、彼はあんな瞳をしていた。眼前にあるものを見ているようで、実は全然見ていないような、はるか遠くを見るかのような。
「―王、光王」
何度かめに、彼はやっと気付いたように香花を見る。
「何だ」
香花は哀しい想いで、すぐ傍にいる男を見上げる。こんなに近くにいるのに、光王が遠い。あの夜空に浮かぶ月よりも遠く感じられてならない。
香花は改めて月を見上げた。
今夜は月が随分と近く見える。夜空が晴れ渡っているせいか、黄褐色の月面にくっきりと陰が刻まれているのまで克明に見て取れる。
「―」
光王からの応(いら)えはない。
香花は訝しく思い、何げなく視線を動かす。光王の精悍に整った貌をそっと窺うと、彼はぼんやりと月を仰いでいる。
また、あの瞳だ。
香花の胸に言い知れぬ感情が湧き起こる。先日、喧嘩したときも、彼はあんな瞳をしていた。眼前にあるものを見ているようで、実は全然見ていないような、はるか遠くを見るかのような。
「―王、光王」
何度かめに、彼はやっと気付いたように香花を見る。
「何だ」
香花は哀しい想いで、すぐ傍にいる男を見上げる。こんなに近くにいるのに、光王が遠い。あの夜空に浮かぶ月よりも遠く感じられてならない。