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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第12章 半月

 光王が急に真顔になった。
「では、お前が真に一人前の女かどうか試してみるか?」
 手が伸びたかと思ったら、急に引き寄せられた。そのまま呆気なく光王の腕にすっぽりと包まれ、逞しい胸に顔を押しつける形になってしまう。
 規則正しい鼓動が衣服越しに聞こえてくる。心なしか少し速いような気がするけれど、気のせいだろうか。
「ちょっ、か、光王?」
 焦りを帯びた声で訴え、しきりに身体を離そうとしても、光王の腕はまるで鋼(はがね)のように屈強で、香花の力などではビクともしない。
 香花が懸命に抗っていると、ふっと力が緩んだ。その隙に香花は慌てて身を離した。
「香花」
 ふいに名を呼ばれ、香花は深くは考えず衝動的に光王を見上げた。
 綺麗な顔が至近距離まで近づいてきた。
―口づけされる?
 形の良い唇がまさに手前まで迫ってきたその時、香花は思わず両手で彼の身体を突き飛ばした。
「な、何するのよ?」
 香花はじりじりと後ずさった。
「何だ、接吻は初めてじゃないだろう?」
 光王が余裕の笑みで香花を追いつめる。

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