テキストサイズ

月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第2章 縁(えにし)~もう一つの出逢い~

 香花は、紫陽花に向かって呟く。
 頬に冷たいものが触れたと思ったら、とうとう降ってきたらしい。鈍色の雲に覆われた空から雨滴が落ち始めていた。
 降り出した雨に濡れるのも厭わず、香花はその場に立ち尽くす。頬を流れ落ちるのが自分の涙なのか、雨なのかは判らない。眼の前の紫陽花の蒼が昨日よりも深まったように見えるのは、気のせいだろうか。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ