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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第12章 半月

「光王」
 香花が眼を見開くと、光王はいつになく真摯な眼を向けた。
「お前には誤解されたくない。だから、ありのままを伝えた。俺を信じてくれ、香花」
 何故だろう、たったそのひと言を耳にしただけで、心の中にわだかまった氷が忽ちの中(うち)に溶けてゆく。心の蕾がほころんでゆく。花が開くように、心が解けて温かいものが流れ出す。
 その温かい感情は自然に光王の方に向かって流れてゆく。
 香花は素直な気持ちで光王に微笑みかけた。
「私は信じるわ、光王、あなたの言葉を」
 光王が再び香花の腕を掴み、強い力で引き寄せた。
「光王?」
 香花がまだどこかあどけなさすら残す表情で見上げる。
「光―」
 もう一度問いかけようとした香花の唇を光王がすかさず塞ぐ。
「や、いや!」
 突然のなりゆきに、香花は大いに愕き、狼狽える。その可愛らしい面には当惑が浮かんでいた。

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