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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第12章 半月

 光王の手が衣服越しに香花の乳房をそっと包み込んだ。大きな手のひらに胸のふくらみを包まれ、そっと上から押されると、自分でも正体の判らない妖しい震えが身体中をピリピリと走る。
 小柄で華奢な割には豊かな胸を優しく揉まれると、その得体の知れない感覚はどんどん強くなってゆく。
 光王は香花の胸を優しく揉みしだきながら、口づけを続ける。弾力のある温かな唇と、唇を割ってすべり込んできた淫らな舌の熱。
 香花は眼を見開いた。
 徐々に強くなっていた妖しい感覚に呑まれ、今にも身体ごと支配されそうになっていた矢先、ハッと我に返ったのだ。
 渾身の力で、香花は光王を振りほどいた。
 後退し、身を強ばらせて距離を置く。
 月よりもなお冷めた光王の双眸がじっと見つめてくる。つい先刻までは燃える情熱を宿した瞳が今はまるで真冬の湖のように凍てついていた。
 香花は手を握りしめた。そうしなければ、すくんでしまいそうだ。何故―光王はこんな眼をしているのか。自分の中に、何を、誰を見ているのか。

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