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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第12章 半月

 光王は一旦口を開きかけ、小さく息を吸い込む。
「惚れた女がすぐ傍にいながら、どうして他の女を抱く必要がある? 世の中には、そういう男もいるのかもしれないが、少なくとも、俺は違う。心から想う女ができれば、その女しか眼に入らない」
 香花の眼が大きく見開かれた。
「光王、それって―。まさか」
 光王が微笑む。
「お前は、やっぱり、どこまでもとことん鈍い女だな。もっとも、俺も平気な顔をしてるが、今だって、冷や汗ものだぜ。これまで女から好きだと言われても、自分から好きだなんて言った経験はあまりないんだ。俺は正直、お前が俺をどう思っているのか判らない。―女の気持ちが判らないなんてことも、これが初めてだからな」
 光王が静かな瞳で見つめてくる。
 その双眸は〝俺をどう思っている?〟と、問いかけていた。

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