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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第12章 半月

「判ったわ」
 先刻の―執拗に何度も唇を奪い、身体をまさぐってきたときの光王は少し怖かった。たとえ両想いになれたとしても、香花はまだ今は、もう少しこのまま、穏やかな関係でいたい。それは香花の甘えであり、我が儘なのかもしれないけれど。
 明善さま、本当にこれで良かったのでしょうか。光王を選んだ私を、明善さまはお許し下さいますか?
 心の中で問いかけると、明善はあの春風のような笑みを浮かべたまま、すっと瞼から消えた。
 その日、香花は明善から託されて以来、ずっと首にかけていた水晶のロザリオを外し、文机の引き出しに大切にしまい込んだ―。

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