月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第12章 半月
その数日後のこと、香花は午後から町に出た。特にこれといった用事があるわけではないが、たまには息抜きに町の露店でも眺めてみたいと思うのは娘心としては当然だろう。
四半刻をかけてゆっくりと歩いて町までゆき、大勢の人々で賑わう露店街を見て回る。町の目抜き通りの両脇にそれこそ露店が軒を連ねているのである。
声高に客を呼び込む八百屋の主人、幼い子ども連れの値切り上手な女房。町は活気に溢れている。前任の使道のときは裏で使道が悪徳商人と結託していたため物価が高騰していたが、今の使道が赴任してきてからというもの、物価も安定し、民心も落ち着いた。
香花は光王の好物の蒸し饅頭を何個か求め、再び歩き始める。
ふと、前方に幼い子どもが立っているのが眼に入った。どうもその後ろ姿に見憶えがある。
と、子どもが向こうから走ってきた若い男に真っ向からぶつかった。
「痛いじゃねえか。どこに眼をつけて歩いてんだ、気をつけろい」
若者は怒鳴ると、相当急いでいるのか、また脇目もふらずに走り去ってゆく。
四半刻をかけてゆっくりと歩いて町までゆき、大勢の人々で賑わう露店街を見て回る。町の目抜き通りの両脇にそれこそ露店が軒を連ねているのである。
声高に客を呼び込む八百屋の主人、幼い子ども連れの値切り上手な女房。町は活気に溢れている。前任の使道のときは裏で使道が悪徳商人と結託していたため物価が高騰していたが、今の使道が赴任してきてからというもの、物価も安定し、民心も落ち着いた。
香花は光王の好物の蒸し饅頭を何個か求め、再び歩き始める。
ふと、前方に幼い子どもが立っているのが眼に入った。どうもその後ろ姿に見憶えがある。
と、子どもが向こうから走ってきた若い男に真っ向からぶつかった。
「痛いじゃねえか。どこに眼をつけて歩いてんだ、気をつけろい」
若者は怒鳴ると、相当急いでいるのか、また脇目もふらずに走り去ってゆく。