月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第12章 半月
昌福が〝良いの?〟と言いたげな表情で見つめてくるので、香花は笑って頷いた。
途端に嬉しげに満面の笑みで昌福が饅頭に囓りつく。通行人の邪魔にならないよう、香花は昌福と共に道の脇に寄った。
「僕の兄ちゃんも蒸し饅頭が好きなんだ」
「そうなの? 昌福は景福が好きなのね」
「うん、兄ちゃんは格好良いだろ、一座の花形さ」
自分のことのように得意気に言う姿が微笑ましい。
「僕も大きくなったら、兄ちゃんみたいにナイフ投げの達人になりたくて、今、少しずつ教えて貰ってるんだよ」
揚々と話していたかと思うと、突然、しゅんとうなだれた。
「でも、僕はからきし駄目だ。ナイフ投げどころか、何をやってもヘマばかり。今日も皿を何枚も割って親方にこっぴどく叱られた」
どうやら、その罰として昼食は抜きだったらしい。
「それで泣いてたのね。酷いことをするわ。こんな小さな子相手に、幾ら失敗したからといって、ご飯抜きにするなんて」
憤慨していると、昌福が笑った。
「仕方ないよ。僕らの一座は、ろくに仕事のできない奴に無駄飯を食べさせるゆとりはないんだ」
途端に嬉しげに満面の笑みで昌福が饅頭に囓りつく。通行人の邪魔にならないよう、香花は昌福と共に道の脇に寄った。
「僕の兄ちゃんも蒸し饅頭が好きなんだ」
「そうなの? 昌福は景福が好きなのね」
「うん、兄ちゃんは格好良いだろ、一座の花形さ」
自分のことのように得意気に言う姿が微笑ましい。
「僕も大きくなったら、兄ちゃんみたいにナイフ投げの達人になりたくて、今、少しずつ教えて貰ってるんだよ」
揚々と話していたかと思うと、突然、しゅんとうなだれた。
「でも、僕はからきし駄目だ。ナイフ投げどころか、何をやってもヘマばかり。今日も皿を何枚も割って親方にこっぴどく叱られた」
どうやら、その罰として昼食は抜きだったらしい。
「それで泣いてたのね。酷いことをするわ。こんな小さな子相手に、幾ら失敗したからといって、ご飯抜きにするなんて」
憤慨していると、昌福が笑った。
「仕方ないよ。僕らの一座は、ろくに仕事のできない奴に無駄飯を食べさせるゆとりはないんだ」