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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第12章 半月

 妙に悟ったような表情で淡々と言うのが哀しい。
「しっかり食べなさいね。欲しかったら、私の分もあげるから」
「うん」
 夢中で食べているせいで、口の周りに饅頭の皮がついているのも気付かないようだ。
 香花がそっと指で摘んで取ってやると、昌福は嬉しげにニッと笑う。
 その表情は八歳の子どもらしく、無邪気で屈託がない。無心に饅頭を頬張る可愛らしい姿を香花は微笑ましく眺めた。

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