月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第12章 半月
昌福は跳ねるように走っていた。
夢中で走っている中に、いつしか人通りの多い繁華街から抜けて、町の外れに差しかかっていることに漸く気付く。
先刻まで親方に叱られてしょげ返っていたけれど、あの優しいお姉ちゃんのお陰で元気が出てきた。
あのお姉ちゃんは、確か以前にも僕を助けてくれたことがある。
宋さまだか何だか知らないけど、両班の偉い旦那さまが僕を無理にお屋敷に連れてゆこうとしていた時、あのお姉ちゃんが止めてくれたんだ。
あのときのことを、幼い昌福は今でもよく記憶していた。あの後、兄景福が香花の元までわざわざ礼を言いに言ったことも、兄から聞かされて知っている。
と、昌福は脚を止めた。
さして広くはない道の両側に、薄紅色の小さな花がいっぱい群がって咲いているのだ。
野原というにはおこがましいけれど、ちょっとした広さのある空間がひろがっており、そこに一面の花が咲いている。
夢中で走っている中に、いつしか人通りの多い繁華街から抜けて、町の外れに差しかかっていることに漸く気付く。
先刻まで親方に叱られてしょげ返っていたけれど、あの優しいお姉ちゃんのお陰で元気が出てきた。
あのお姉ちゃんは、確か以前にも僕を助けてくれたことがある。
宋さまだか何だか知らないけど、両班の偉い旦那さまが僕を無理にお屋敷に連れてゆこうとしていた時、あのお姉ちゃんが止めてくれたんだ。
あのときのことを、幼い昌福は今でもよく記憶していた。あの後、兄景福が香花の元までわざわざ礼を言いに言ったことも、兄から聞かされて知っている。
と、昌福は脚を止めた。
さして広くはない道の両側に、薄紅色の小さな花がいっぱい群がって咲いているのだ。
野原というにはおこがましいけれど、ちょっとした広さのある空間がひろがっており、そこに一面の花が咲いている。